11.診療報酬は誰が決めるのか ― 中医協を“経営言語”に翻訳する ―

「診療報酬は国が決めている。」
たしかに最終的な決定は国(厚生労働大臣)にあります。そして、診療報酬の“中身”を具体的に議論し、点数という形にまとめていく中心の場が、中央社会保険医療協議会(中医協)です。

厚生労働省の説明によれば、中医協は診療報酬などについて厚生労働大臣の諮問に応じて審議・答申し、必要に応じて自ら建議も行うと整理されています。 法律の条文にも、診療報酬に関する定めをしようとするときは中医協に諮問する、という趣旨が明記されています。 つまり制度としても、「いったん中医協で議論する」ことが前提になっているわけです。

ただ、私の理解では、中医協は単なる“医療点数翻訳装置”ではありません。点数表に落とし込む作業は確かに必要ですが、そこで本当に難しいのは、その前にある「優先順位」と「線引き」だと思います。限られた財源の中で、どの医療を守るのか。どこに手当てを厚くするのか。あるいは、これまでの形を変えていくのか。こうした判断は、医学書では判断できません。医学的に正しいだけでなく、持続可能でないといけないからです。

中医協が“交差点”になるのは、その構成を見れば納得しやすいと思います。診療側(医師・歯科医師・薬剤師など)、支払側(保険者・経済界など)、公益委員という三者構成で議論する枠組みが採られています。 ここで交わされるのは、「医学的に正しいか」という議論に加えて、「社会としてどこまで負担できるか」「制度として何を優先するか」という話です。医療政策と財政制約の交差点、という表現は少し硬いかもしれませんが、まさにそんな場所ではないかと感じています。

そして診療報酬改定は、「評価」であると同時に「誘導」でもあります。点数や算定要件の形で、伸ばしたい医療、支えたい医療、見直したい医療が見えてきます。点数表は値段表であると同時に、国からのメッセージ集でもある。私はそう考えています。

ありがたいのは、中医協の議事録や資料が公開されていることです。 結論(点数)だけでなく、途中で何が論点になったのか、どこで折り合いをつけたのかを、後から追うことができます。議事次第を見ても、改定に関する諮問が議題に上がっていることが確認できます。

ここからは私見です。臨床医や病院管理者にとって、中医協を読むことは「点数を取りにいく技術」のためだけではないと思います。むしろ、「次に何が求められるか」を早めに知り、診療体制や人材配置を“先回りして整える”ための地図になります。

中医協を“経営言語”に翻訳すると、問いは意外にシンプルです。この医療は、国が今後も残したいものか。人・時間・設備を投入する価値があると見なされているか。将来、縮小や再編の対象になりうるか。改定のたびに一喜一憂するより、「次に備える」視点へ。そのために中医協を読む習慣を持つことが、現場が制度に振り回されない第一歩かもしれません。