12.改定は“医療の方向性”をどう誘導するか ―基本方針から読むー

診療報酬改定は、「医療行為の値段を決め直す作業」というより、「これからの医療をどちらへ動かしたいのか」を示す作業だと思います。その“意図”を最も端的に読めるのが、「診療報酬改定の基本方針」です。厚生労働省の公表によれば、令和6年度改定の基本方針は社会保障審議会の医療保険部会・医療部会で取りまとめられ、文書として公開されています。

基本方針を読むとき、私がまず見るのは「最初の基本認識」です。令和6年度の文書では、物価高騰や賃金上昇が医療のサービス提供や人材確保に影響していること、患者が必要な医療を受けられるよう機動的な対応が必要であることが述べられています。 ここは、私たち現場の感覚ともかなり一致します。診療報酬は“医療の中身”だけでなく、“医療を支える条件”にも目配りせざるを得ない、という宣言にも見えます。

次に見るのが、「基本的視点」と「具体的方向性」です。概要資料では、たとえば物価高騰への対応、安心・安全で質の高い医療の推進、小児・周産期・救急など重点分野への評価、疾病管理や重症化予防、薬局・薬剤師業務の対人化、医薬品の安定供給やイノベーションの評価、さらに効率化・適正化といった方向性が例示されています。 ここで大切なのは、基本方針は「点数表そのもの」ではないのに、次に出てくる点数や算定要件の“設計思想”がかなり透けて見えることです。つまり、基本方針は「点数の前の地図」です。

改定のたびに点数の増減だけを追うと、どうしても短期の損得に目が行きます。しかし基本方針を先に読んでおくと、「国が今どこに危機感を持ち、どこを支えようとしているのか」を先回りして理解できます。私は、臨床医は基本方針を理解しておく必要があると思っています。そうすれば、診療体制や人材配置を「点数に振り回されて後追いで直す」のではなく、「方向性を見て先に整える」発想に近づけるからです。

次回は、この基本方針が実際にどう「点数」や「算定要件」に落ちていくのか、改定が“評価”だけでなく“誘導”として働く仕組みを、もう一段具体的に見ていきます。