医療費の議論が難しく感じるのは、「誰が払っているのか」が一目で見えにくいからかもしれません。けれど、基本の骨格は意外にシンプルです。大づかみに言えば、医療費は①保険料、②公費(税)、③患者の自己負担、という“三本柱”で支えられています。
厚生労働省の資料では、医療費のうち窓口で支払う自己負担は平均約15%で、残り約85%は医療保険制度から支払われる(実効給付率)と説明されています。そして、この約85%の内訳は、保険料が約53%、公費が約32%という整理です。ここを押さえるだけで、「医療費=税金だけで賄っているわけではない」「医療費=本人負担だけで決まるわけではない」ことが理解できます。
一方、自己負担は“誰でも一律”ではありません。厚労省の資料によれば、70歳未満は原則3割、義務教育就学前は2割、70~74歳は2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割(現役並み所得者は3割、一定所得以上は2割)という枠組みが示されています。 つまり同じ医療を受けても、窓口で払う割合は年齢・所得で変わります。さらに、高額療養費などの仕組みもあるため、実際に家計が負担する割合(実効負担)は、名目の「3割・2割・1割」よりも平均では下がっていく、という構造になります(実効給付率)。
医療財政の話は、ともすると「誰が得をして誰が損をするか」という対立に寄ってしまいます。しかし、今後も医療が継続することが最も重要で、そのためには“負担の分け方”を冷静に議論する必要があると感じます。保険料で支えるのか、公費で支えるのか、自己負担をどう設計するのか――どれか一つで解決する話ではなく、三本柱の配分をどこに置くかが制度設計の核心ではないでしょうか。私は、まず全体像(実効給付率と財源の内訳、自己負担の年齢差)を共有したうえで、世代間・所得間の納得感をどう作るか、という順番で議論するのが現実的だと思っています。
