14.DPC/PDPSの光と影 ―急性期入院医療をどう変えたかー

臨床医なら誰もが知っているように,DPC/PDPSは、急性期入院医療を「診断群分類(DPC)」という共通言語で整理し、その上で「1日当たり包括(PDPS)」を基本に支払う制度です。厚生労働省の資料では、DPC/PDPSは「急性期入院医療を対象とする診断群分類に基づく1日当たり包括払い制度」と定義されています。

制度の骨格は、“包括と出来高の併用”です。包括評価部分は、原則として「診断群分類ごとの1日当たり点数 × 入院日数 × 医療機関別係数」で算定し、手術・麻酔など一部の診療行為は出来高で上乗せされます。 ここでポイントになるのは、DPCが「入院を丸ごと定額」にする発想ではなく、入院の中でも“包括しやすい領域”を束ね、技術料色の強い部分は出来高として残す、という設計思想です。だから現場では、同じDPCでも「包括で吸収されるコスト」と「出来高で返ってくる領域」を常に意識していることと思います。

さらにDPC/PDPSは、入院日数に応じて包括点数の重みづけが変わります。いわゆる入院期間(期間I・II・III)の考え方で、急性期の前半に資源投入が集中しやすいことを踏まえ、前半ほど1日当たり点数が高く、その後逓減する形で設計されています(超長期は外れ値の扱いになります)。この「日数に沿った逓減」は、在院日数の短縮を単純に“善”として押すというより、急性期の標準的な資源投入の分布を制度側が仮定している、と考えるとわかりやすいかもしれません。

医療機関別係数も、DPCの制度運用を理解するうえで欠かせません。厚労省資料では、基礎係数に加え、機能評価係数(I・II)などが組み込まれ、急性期機能や取組を一定程度反映する枠組みが示されています。係数設計はDPCを単なる包括払いではなく、「急性期としての役割や質の確保に、どこまでインセンティブを置けるか」という制度設計上の挑戦のようにも見えます。係数や評価項目が増えるほど制度は精緻になりますが、現場の運用負担も増えやすい。ここにDPCの“光と影”が同居します。

導入の経緯も、制度の性格をよく表しています。厚労省資料では、制度化に先立って1998年に10病院で包括払いの試行が行われ、その検討を経て、2003年4月に82の特定機能病院を対象として導入されたことが示されています。 その後、対象は段階的に拡大し、急性期入院医療の“見える化”と標準化を進める基盤として機能してきました。

DPC/PDPSの「光」は、急性期入院を共通言語で整理し、資源投入と在院日数を比較可能にした点にあると思います。一方「影」は、急性期の個別性(重症度、合併症、地域の受け皿、救急受入れなど)を制度がどこまで吸収できるか、という限界が常に残る点でしょう。制度の狙いを理解したうえで、「何が包括に入り、何が出来高に残り、どこに係数や評価が置かれているか」を読み解くことが、現場が制度に振り回されないための前提になるのではないでしょうか。